出社すると会社に人があふれていた。

 それを眺めていた加奈が華に気づいて側に来た。

「おはよ。華ちゃん。
 うちの部署は男ばっかだったからね〜。
 足りない女の子は派遣の人を頼んだみたいだよ。」

 加奈が言うように女の子が大量に増えていた。

 そして土日に搬入を済ませたらしい、新しいデスクやパソコンなんかも所狭しと置かれている。

 その中で部長が指示を出していた。

「社員一人につき、異性とペアになるのはもう知っていると思う。
 社員にはメールで誰がペアか資料が来ているから確認するように。」

 これはこのゴタゴタが落ち着くまで仕事もできないな…。

 はぁとため息をつきながらメールを確認した。

 華のペアは内川さんという人だった。

 話したことは数えるほどしかないけれど、穏やかな人だったことは覚えている。

 相性のいい人を計算ではじきだしたね…。本当かなぁ。

 いぶかりながらも華は自分の荷物を新しいデスクへと移動させた。

「奥村さん。君は派遣の子たちに部内のことを簡単に説明してあげて。」

 そう部長に言われ、内川さんとの自己紹介もそこそこに、派遣の人たちが待機することになった会議室に向かった。

 その途中、休憩室で談笑している声が聞こえた。数名の男性社員のようだ。

 その中の一言が華に衝撃を与えた。

「派遣の女なんて使い捨てだろ?仕事としても女としても。」

 な…何それ…。

 怒りで手がわなわなと震える。すると聞き慣れた声が聞こえた。

「ご自身が使い捨てにされないように注意された方がよろしいのではないですか?」

「な…。」

 使い捨て、と言った先輩が今にも怒り出しそうなのが、外の華にまで伝わる。

 南田さん…。先輩にそんなこと言っちゃって大丈夫なの?

 別の緊張で華はその場に立ち尽くす。南田の声がまた聞こえた。

「もちろん僕もです。」

 華はその場から離れると会議室へ向かう。

 さきほど聞いた会話が頭を巡った。

 もちろん僕も…。僕も使い捨てにならないように…。本当にそう思っているのかな。
 その一言で先輩の逆鱗に触れることは免れたみたいだけど…。

 そもそも先輩の「派遣は使い捨て」発言はどうなのよ!

 たくさんの複雑な思いが交錯しながら、華は会議室のドアを開けた。