「なるほど。…では阻害するのは否めないが、かけたままにしよう。
 その方が嫌でも僕を思い出すだろう。」

 近くなる顔から発せられる声が僅かに甘い気がして余計にドキドキする。

「どうしてそうなるんですか。」

「どうして…。」

 答えを模索するように、考えるように南田は口を開いた。

「君の体が僕を忘れられないように、僕から逃れられないように…嫌でも求めるようにか?」

「なっ…。」

 疑問系で言われた言葉に顔が熱くなる。

 な、なんかすごくエッチなこと言われてる気がするんですけど!

 近づいていた顔はもう触れてしまいそうなほどに近くにあった。
 華はドキドキを隠すように目を閉じた。

 フッと漏れた息が華のくちびるにかかると、そのまま重ねられた。
 頬に眼鏡が当たる。

 そっと触れるくちびるは柔らかく、その隙間から漏れる息が華に伝わって胸をキュッと締め付けた。

 南田は華の手を取り、認証させた。


「体がにわかに硬直をしている。呼吸も僅かだが荒いようだ。声も上ずっていた。手の震えもある。緊張が現れているようだ。」

 顔を離した南田は無表情で華の身体症状を報告する。

「言われなくても分かってます。だから毎回緊張しなくてすむようにしてください。」

 華の言葉に何度か頷く。

「そうか。それは配慮に欠けていた。次回からは気をつけよう。」

 次回から…。まぁもう私もする前提の話し方しちゃってるしね。

 それにしても、全く動じない南田に華はまた胸をチクリとさせていた。