「宗一。無駄話するためにかけてきたのか?」

「あぁいや。
 お礼代わりに教えてやろうと思って。
 だいたい湊人は自分の気持ちにも気づいてないんだ。
 あの子の気持ちも知らないんだろ?」

「あの子の気持ちってなんだよ…。」

 ため息混じりに言った南田の耳に衝動の言葉が届いた。

「お前のこと好きだって文句言いながら訴えてたぜ。」

「な…。」

 何を宗一は言っているんだ。
 からかうにしても悪質過ぎる。

 そう思うのに心臓が壊れそうなほどにドクドクと音を立てる。

「今日、綾乃があの子に会いに行ってよ。」

「まさか会ったのか!」

 急に血の気が引く思いがして、頭がフラッとした。
 綾乃は嫌がらせをした張本人だ。
 奥村にひどいことをし兼ねない。

 何故それを早く言わないんだ。
 あんな戯言よりもそっちの方が…。

「それがまさかの撃退!」

「は?撃退?」

 南田はまた耳を疑う。

「ま、説明するよりも聞かせた方が早いな。
 ちょっと待てよ。」

 何か用意している宗一に、またこいつの悪趣味で会話を録音したとかか?
 …しかしそうだとするなら、奥村さんの本当の思いだということになる。

 南田は急に緊張してスマホを握りしめた。