会社の外に出ると風が冷たく頬を刺した。

 奥村はボーッと歩いている。
 そんな奥村の手を引っ張った。

 一緒にいるのに心あらずなのは些か許容できない。

 よろめいた奥村を支えた南田はそのまま顔を近づける。

「やっ…。」

 小さくそう聞こえて、余計に苛立ちそうになる。

 昨日は自らしたじゃないか。

 南田は頬にわざと眼鏡を当てた。
 そしてそっとくちびるを優しく触れさせた。

 無理矢理だろうと愛おしいのは変わらない。
 傷つけるような真似はしたくなかった。

 ピッ…ピーッ。認証しました。

 手を取り認証させた。