南田は残った仕事と明日も残ってしまうだろうと見越してかなりの量の仕事を進めていた。
 もちろんさすがにそれ相応の残業になる。

 こんなことくらいどうってことない。
 彼女はもっとつらいだろう。

 奥村さんにつらく当たることしかできない僕がこれくらいのことをしないでどうするのか…。

 その思いで黙々と仕事に没頭していった。


 次の日、奥村はめげずに出社した。
 そのことに安堵する。

「おはようございます。」

「あぁ。早いんだな。」

 南田は奥村をねぎらいたかったが、それを口にすることはなかった。


 仕事を始めると南田は容赦ない指示をするように心がけた。

「この製品は樹脂だ。
 抜き勾配も知らないのか。
 君は設計者としての自覚が足りなさ過ぎる。
 製品ばらつきを考えろ。
 ここの寸法がこれでいいわけがない。」

 奥村さんはよくやっている。
 だが、それではダメなのだ。

「休息を取ろう。」

 南田はため息混じりに口にした。