朝になると自分の会社のことがニュースになっていた。

 内容はキス税の認証率アップのために異性の社員とペアになって仕事をする。
 ということだった。
 足りない人材は派遣を雇うらしい。

「企業にはキス税を払っている人数の割合が多いと罰金が課せられることが先日可決されました。その対策のようです。」

 そう口にするアナウンサーは笑顔だった。

 しかし南田はとても笑える心持ちではなかった。

 どの会社でもそこに勤めている人のキス税を払っている割合は簡単に知ることができた。

 その割合が高いと会社としての支出が今後増えることはもちろん、残業過多で出会いを奪っているのではないか…と悪名が高くなってしまう。

 キス税、婚姻率の上昇、少子化への歯止め。様々なことが叫ばれているため、全てに関わるとされているキス税は今や重要な企業イメージとなっていた。

 企業イメージが悪くなれば優秀な人材を確保できない。

 社員の異性ペア制度。
 会社としても生き残りをかけた苦肉の策なのだろう。

 コメンテーターが意見する言葉はかろうじて南田の心を動かした。

「では、そのペアは相性がいい人を独自に計算してはじき出された最高のペアということですね?これは素晴らしい。」

 最高のペア…。
 それが奥村さんとなら感涙にむせぶのだが。

 南田は希望など持てないままマンションを出て会社に向かうのだった。