当初の予定通り夕食を共にすることになった。
 そのことについてはスムーズに事が運ぶ。

 手伝いもしてくれて、一緒に暮らせたらこんな感じだろうか…との想像が頭の片隅に浮かぶが、彼女の全くもって意に介さない素ぶりに虚しくなるだけだった。

「美味しそうですね。」

 料理を前に顔をほころばせた奥村と目があった。

「君は食物を前にすると大変にいい顔になる。」

 いつもその顔でいてくれたらいい…。

 そう思う南田に奥村はクスッと笑った。
 何故その笑いになるのか理解できずに南田は首を傾げた。

 どうも僕に対しては解せない笑い方が多い気がする…。

 食事が終わると帰ってしまう気がして、すかさず声をかけた。

「やはり何か視聴したい」

 返事を聞かずにDVDをセットした。
 断ることなくソファに座る奥村に安堵して自分もソファに座った。

 流したのは綺麗な風景のDVDだ。

 自分自身もリラックスできるその映像が好きだったし、何より奥村にリラックスして欲しかった。

 南田はやっと息がつける気持ちだった。

 しかし、テレビから正面のソファに座る奥村はテレビの右側に座っている南田に声をかけた。

 それは南田にとって衝撃的な言葉だった。

「こっちで見ないんですか?」

「…理由を簡潔に述べてくれ。」

 緊張していたのではないのか。

 それとも緊張は「僕に」ではなく「認証に」ということか。
 それにしたって同じソファに座るなど…。

 急にこの部屋には二人しかいない。
 二人っきりだ。
 ということを否応なしに意識する。

「いえ…。そっちだと見にいくかなって。」

「君の言動は、にわかに軽率だ。」

 この子は男というものを分かっていない。
 …だからこその訪問か。
 それとも他に理由が?

 ごちゃごちゃとうるさい思考を整理できないまま立ち上がり、奥村の隣のクッションをどかしてそこに座る。

 そしてそのクッションを奥村と自分との間に置いた。

 君は気にならないのだろうが、僕にはこれが精一杯だ。