「だったら契約を破棄したらいいと思います。
南田さんだって別に税金を払うことに抵抗はないんですよね?」

 何故そうなるんだ…。

 一番恐れていた言葉に南田の声にも力が入る。

「なにを今さら…。
 無能な心証を与えるのは許容できないと告げたはずだ。
 それとともに人命救助という重大でかつ明白な責務がある。」

「もう命は大丈夫です。
 ありがとうございました!」

 奥村も引くつもりはないらしい。

 もういい。この際、開き直りだ。
 この子を…この子を失うくらいなら悪い奴で構わない。

 ため息をつくと、呆れ声を出した。

「君は理解していないようだ。
 君には抗体がない。
 相手が僕のような抗体がない者でなければ重篤化する危険があるのだ。
 つまり…。」

 ショックを受けたようにガックリ肩を落とした奥村に僅かな胸の痛みを感じた。
 しかしそれでも南田は追い打ちをかける。

「僕たちは契約者として理にかなっていたことを示している。
 君も素直に僕を所望するといい。」

 検査結果は確かにその通りのことを表していた。