インターホンの音に胸を高鳴らせると、それを悟られないように素っ気ない対応をする。

 中に招き入れるとソファを勧めた。

「適当に座ってくれ。」

 待ち望んでいたはずなのに、彼女を目視してしまっては動揺しそうで、敢えて見ないようにしていた。

 奥村さんが家にいる…。
 そう思うだけで素晴らしかった。

「何か飲用するか?」

 グラス片手に南田は飲み物を勧めた。

 もちろん幾度となく反芻した言葉だったが、あたかも自然に口から滑り出させた。

「おかまいなく。」

 声にいつもの調子が感じられず、奥村をやっと観察した。
 その姿はリラックスとは程遠い姿だった。

 僕としたことが、自分のことに気を取られ過ぎていた。

 ため息をつくと奥村に「待ってろ」の声をかけた。
 体制を立て直すために自室に行き、ベッドに腰掛けると猛省した。

 そりゃそうだ。
 向こうは初めての訪問だ。
 緊張するのが当たり前だ。

 緊張をほぐす…。
 強行手段だが、これに尽きるかもしれない。

 南田は心を決めてリビングに向かった。