パスタやピザを食べながら、その他にも取り決めを交わした。

 まず南田は会社では極力話しかけないことを告げた。

「僕に関与すると君に悪影響が及ぶ。」

 言葉通りだった。
 自分でも分かっていた。

 僕には敵が多過ぎる。
 その事に彼女を巻き込んではいけない。

 お互いに考えることがあったようで、沈黙が流れた。
 その沈黙を破って奥村が質問してきた。

「今後はどうするんですか?」

「今後とは?」

 今後も認証すると先ほどから決めているはずだが。

「いつもこんな個室で会ってご飯を食べてたら、お給料なくなっちゃいます。」

「あぁ。それなら構わない。」

 そうか。
 そのような心配をさせていたとは。
 男がすたるというものだ。

「僕が払うから憂慮は不必要だ。」

「何を…。今日は私が払います。
 さきほど言ったことを聞いてなかったんですか?」

 やはり律儀な子だ。
 女とは言わなくても払わせるのが当たり前と思っている節があったが…彼女は違うようだ。

「強情だな。強情なのは得策ではない。
 吉井さんのように世渡りが上手くなった方がいい。」

 奥村さんはもう少し甘え上手になった方がいい。

 せめて僕にだけでも。いや僕にだけ。

「加奈を知ってるんですか?」

「知ってるも何も同じ部署だ。」

 吉井可奈。
 仕事内容が近いことをしている彼女のことは知っていた。

 性格もサバサバしていて他の女性よりは話しやすかった。

 それに…奥村さんと仲がいいのだから知っていて当然だが…。