「まず君には不特定多数の者との接触は避けて欲しい。」

 この契約はかなり僕に利があるようだ。
 奥村さんとの時間を取れる。

 何よりその時間は認証が含まれる。
 そして他の男も排除させられる。

 いいこと尽くめだ。

 南田は自分のいい方向に進む状況に喜ばしい気持ちだった。

「南田さんはいいんですか?」

 僕が不特定多数の接触だって?
 そんなもの必要あるわけがない。

「無論、僕もだ。」

 妬いてくれるのだろうか。

「好きな人ができたらどうするんですか?」

「それは…。」

 その質問を敢えてするのは南田のことではなく他のということになる。

 僅かに浮かれ気分で、その上、契約締結が出来さえすれば、と思っていた南田の心をえぐる質問だった。

「無論のこと。
 懸想人が現れたら契約は解消しよう。」

 そう言うしかなかった。
 気持ちを悟られないように無表情で。

 奥村に不審がられないように南田はグラスの水を飲み干した。
 胸の痛みを誤魔化してしまいたかった。