南田も寝不足がたたって、丸椅子に腰かけ腕組みをしたまま、うとうとしていた。

 どのぐらい経っただろうか、ごそごそと動く音に南田は目を開けた。
 奥村が起きたようだ。

「やっと覚醒したか。」

 目を丸くした顔がなんとも言えない。

 これは無自覚でやっているのだろうか…。
 機会があれば注意したい案件だ。

 驚いていた奥村が質問をしてきた。

「今、何時ですか?」

 言われて自分も時計を確認する。

「六時だが?」

「…え?」

「六時だ。」

 そうか六時か…そう思っていると思いもよらない音を聞いた。

 グーッ。

 盛大な音。
 それは奥村のお腹からのようだ。

 顔から耳までもが赤くなる奥村に思わずフッと笑い声を漏らした。
 南田の笑い声に気づいたのか奥村は驚いた声を上げる。

「え?」

 顔を確認されたが表情を崩すようなヘマはしない。
 心の動きを悟られないように平坦な声を出す。

「食物を摂取しに行こう。」

 普通に誘ったつもりだった。
 それなのに奥村は笑っている。

 どちらかと言えば失笑に近い笑いだ。
 希望していた笑顔ではないものを向けられて僅かにムッとする。

「何がそんなにおかしいんだ。」

「なんでもありません。ご馳走して下さいね。」

 良かった。普通に応じるようだ。
 そんなもの一緒に食事ができるのなら当然だ。

「構わない。昨日もそのつもりだった。」

 今度こそ普通だと思っていたのに、また奥村は笑っている。

 その姿に南田は怪訝そうな声を出した。
 表情は崩さないように努めて。

「何をそんなに…。
 君のお腹の方がよっぽどに滑稽だ。」

 自分で発言してそのことを思い出すとフッとまた息が漏れた。

 やはりこの子は…。

 そんなことを思っていた。