その瞬間、私の両耳に差し込まれた彼のイヤホン。
同時に流れてくるのは、大音量の知らないバンド音楽。
一瞬にして、教室のざわめきも、ヒソヒソ噂する女子たちの声も何も聞こえなくなって。
……あぁ、そっか。そういうことか。
矢吹くんは、あのヒソヒソ話に落ち込む私を励ましてくれようとしたんだ。
そう分かった途端に、思わず涙が出てきそうになった。
やっぱり、彼は優しい。
ぶっきらぼうだし分かりにくいけれど、いつだってこんな私のことを気遣ってくれる。
その不器用な優しさに、傷付いた心が少しだけあったかくなったような気がした。



