ドキッとして振り返ると、そこにはすらっと背の高い黒髪の男の子が、こちらをじっと見下ろしていて。


半分バカにしたようなその表情に、また恥ずかしさで顔が熱を持った。


「あ、矢吹(やぶき)くん」


加奈子ちゃんが彼の名前を呼ぶ。


彼は、同じクラスの矢吹透(やぶき とおる)くん。


いつもクールで飄々としていて、基本一人でいる一匹狼タイプ。


これといってよく話すというわけでもないんだけれど、なぜかたまにこうしてからかってくるんだ。


「柏木ってほんと抜けてるよな」


「うっ……」


「ちょっとー、蛍をバカにしないでよ~!」


加奈子ちゃんがすかさず言い返してくれる。


すると、矢吹くんは突然、私の髪にすっと手を伸ばしてきて。


「つーか、なんかゴミついてるし」


「えっ!うそっ」