『えーっ、なんであの子なの?』
『やだー、ショック』
『柏木さんのどこがいいのかな?』
有名人と付き合うのは大変なんだということを、あらためて実感する。
私のひ弱な精神では、それに耐えうることができなかった。
「柏木さん、ちょっといい?」
ある日私は、クラスで一番派手な女子、碓井さんに呼び出される。
彼女は中二にして髪を染めたりピアスを開けたりしていて、他の女子から一目置かれると共に恐れられていた。
「碧空くんのこと、どうやって落としたの?」
「なんでアンタみたいなのが碧空くんと付き合えるわけ?」
「マジで釣り合わないんだけど」
誰もいない廊下の端で、彼女とその仲間数人に取り囲まれて、詰め寄られる。
だけど私は、何も答えられなかった。
怖くて足が震えて、声も出なかった。



