よく見ると、碧空くんの瞳は、なぜか切なげに揺れている。


どうしたんだろう……。なんでそんな顔をするのかな?


「蛍、手出して」


「えっ、手?」


そして、急に手を出してと言われたので出してみる。


「うん。こうやって……」


すると、彼は私の左手にピタッと自分の右手を合わせたかと思うと、そのまま顔をじっと近づけてきた。


……わあぁっ。


碧空くんの額が、私の額にコツンとぶつかる。


そして、至近距離で見下ろすようにして、ボソッと放たれた声。


「蛍の手が小さいのなんて、俺はずっと前から知ってる」


「……っ」


思いがけない一言に、一瞬心臓が止まるかと思った。


なにそれ……。


「……なんてな。それじゃまた」


それだけ言うと、碧空くんは教科書を持ってくるっと背を向けて去っていく。