すると彼は私の手を見ながらクスッと笑いだして。


その表情がいつになく優しい顔だったので、思わず少しだけドキッとしてしまった。


矢吹くんってこういう顔もするんだ……なんて。


なんか最近よく笑ってくれるような気がするな。


「……蛍!」


だけどその時、すぐ近くの教室入り口から、誰かが私を呼ぶ声がした。


……あれ?この声。


ハッとして振り返ると、なぜかそこには碧空くんの姿が……。どうしたんだろう。


目が合うと、こっちに来てというかのように手招きをする彼。


「碧空くん、どうしたの?」


慌てて駆け寄ると、碧空くんはいつもどおり爽やかな笑みを浮かべる。


「おう。ごめんな、急に。

実は英語の教科書忘れてさ。蛍持ってる?」