【完】もう一度、キミのとなりで。


その言葉に一瞬固まった。


あれっ?今、バ柏木って……。


「えっ、あ……わ、私!?」


慌てて聞き返すと、矢吹くんは壁から背中を離す。そして、くるっとこちらに向きなおると、真面目な顔でじっと私を見た。


「うん。お前が見てるから本気出した」


「えぇっ!」


……な、なにそれ。どういう意味!?


矢吹くんの意味深な言動に、わけもなく鼓動が早まる。


どうしちゃったんだろう。矢吹くんたら急に……。


「え……えっと……」


だけど、私が何も答えられなくてうろたえていたら、彼はフッと意地悪く笑って。


「って、冗談だっつーの。なんだよその顔」


「なっ……」


結局冗談だったみたい。なんだ……ビックリした。


しまいには、「間に受けてんじゃねーよ。アホ」なんて言いながらクスクス笑ってるので、なんだかとても恥ずかしくなった。