珍しく言葉を荒げる彼の姿を見て、なんだか昔を思い出してしまい、胸が熱くなった。
今のは、私のために怒ってくれたんだよね……?
「蛍、こっちきて」
そのまま私の片手をぎゅっと握ると、早足でスタスタとどこかへ向かって歩き出す碧空くん。
タオルをもう片方の手で握ったままついていく。
心臓がドキドキとうるさい。握られた手が、顔が熱い。
まさか、よりによってこんなふうに彼が助けてくれるなんて。
――ガラッ。
近くの誰もいない空き教室まで来ると、碧空くんはドアを開けて中に入る。
シンとした薄暗い教室の中で急に二人きりになって、ますますドキドキしてきてしまった。
とりあえず、お礼を言わなくちゃ。
「あのっ、ありがとう……」



