他愛ない会話を交わしながら歩いていると、あっという間に十羽の家の近くまで来ていた。



家に入っていく路地の前で、十羽が立ち止まる。



「ここで大丈夫。
送ってくれてありがとう」



……またここまでかよ。



まぁ、そう言うなら、俺も無理やり送っていくつもりはねぇけど。



「ん」と返事をすると、ポケットにしまっていた俺の手から十羽の手がするりと離れていく。



「じゃーな。気ぃつけて帰れよ」



手をあげ、体の向きを変えて立ち去ろうとしたその時。



「……待って……!」



突然後ろから、ぎゅっとブレザーの裾を掴まれ、俺は思わず足を止めた。