帰り道。

街灯も少なく、人通りもまったくと言っていいほどない田舎道をふたりで歩いていると。



「そういえば」



ふと、楓くんの耳心地のいい声が真っ暗な静寂を破った。



「ん?」



「おまえ、いつからこっちに戻ってきてたんだよ」



「え? んーと、ちょっと前にね」



「高校は?」



「ほら、ええっと、楓くんの高校の隣の高校の……」



「あー、北高?
そこに転校したの?」



「うん、そう!」



「へー。で、千隼くんは元気?」



「えっ、千隼?」



突然千隼(ちはや)の名前が出てくるなんて思ってもみなかったから、思わず隣を歩く楓くんを仰ぎ見る。



千隼は、私の3つ年下の弟だ。



「うん、千隼なら元気。
中学も、偏差値が全国2位の中学に合格したんだよ。
でも、楓くんから千隼の話が出るなんて意外」



「まぁ俺、そーとー嫌われてたしな、千隼くんには」



「あはは……」



否定しようがなく、私は思わず苦笑いを浮かべる。