好きだから。

だからこそ幸せを願う。



本音を言ってしまえば、行ってほしくない。



だけど、それは私のわがままだから、ぐっと胸の奥に仕舞い込む。



何度、何事もないまま生きていたらと思っただろう。



普通の彼女なら簡単にできることが、私にはできない。



そうしたら、楓くんを傷つけることなんて絶対しなかったのに。



……なにを浮かれていたんだろう。



自分が一番わかっていた。



意識不明の体が、そろそろ限界を迎えることを。



さよならを言わなくてはならない日は、静かにたしかに近づいてきていた。