「いつもの時間になっても楓くん来ないから、心配になって、ついここまで来ちゃった」



「あー、悪い。
日誌書いてたら、いつの間にか寝てたわ」



眠る楓くんの腕の下に日誌があったから、そうかなって思ってた。



「良かった、なにかあったわけじゃなくて」



「それにしても、よく校内入れたな」



「先生に言ったら、いいよって」



「まじ? ゆる」



言いながら、楓くんが私の腕を掴んだ。



上目遣いでこちらを見上げ、ボリュームを抑えた声でつぶやく。



「……なんか、教室にふたりきりはやばい」



「やばい、ね」



「日誌、すぐに書き終わらせるから待ってて」



囁くようにそう言われて、胸がきゅんと高鳴る。



「うん」