私の言葉を受け取ってくれた楓くんが、穏やかに囁いてくる。
「見えた?」
「うん」
楓くんの瞳に私が映っている。
私を見てくれている。
実感すると、鼻の奥がじんわりと痛んで、視界を占める楓くんの顔がふっとぼやけた。
「楓くん、好き」
「俺も」
ぽつりとこぼれた言葉を、楓くんが見過ごすことなく拾いあげて包み込んでくれる。
楓くん……。
髪をかきわけるようにして後頭部に手が回り、ゆっくりと引き寄せられて。
慈しむような優しい手つきに、私は身を任せる。
そして──睫毛が触れ合ったかと思うと、ついに唇が重なった。
初めての大好きな人とのキスは、とびきり甘いはずなのに、涙の味が邪魔をした。