「そーいえば」



不意に、楓くんが切り出した。



「うん」



「おまえ、いつまで楓くん呼びなの?」



「え?」



「付き合ったんだし、呼び捨てにしたら?」



そんなこと、考えたことなかったな。



「うーん、私の中で楓くんって、〝楓くん〟なんだよね」



「なにそれ」



「くんがないと、すごく違和感がある。
いつも掛けてる眼鏡がなくて、そわそわする感じ」



「例えがわかりづらすぎ」と呆れたように言う楓くん。



「俺は、呼び捨てされたかったりするけど」



ぽつりと、あまりにさりげなく呟かれた言葉に、一瞬遅れて反応する。



「え?」