「じゃあ」と言いながらベッドに仰向けになると、体の下でスプリングが跳ねる。
横を向くと、自分の腕を枕にしてこっちを見ていた楓くんと目が合った。
予想以上の近さと、普段とは違う体制で目が合っているせいで、ドキドキしてしまって。
小さい頃ふたりでお昼寝したこと、何度もあったけど、私たちの関係はあの頃とは違う。
頬が急激に火照りそうになるのを自制しながら、気をそらすように問う。
「楓くん」
「ん?」
「今日、学校楽しかった?」
「至ってふつー。
まぁ、黒瀬が寝ぼけて、国語科の荒井ちゃんのことお坊さんって呼んだのは笑えたけど」
「ははっ、黒瀬くん、相変わらずだなぁ」
「荒井ちゃん怒っちゃって、もう大騒ぎ。
黒瀬は天然でやらかすからやばい」
楓くんはその時のことを思い出したのか、苦笑するように笑った。
楓くんの話の9割方は黒瀬くんのことで、こんなこと言ったら怒られちゃいそうだけど、黒瀬くんの話をしてる時の楓くんは目が優しい。
そして私は、そんな楓くんを見てるのが好き。


