【完】君しか見えない



「楓くん、寒かった?」



「ん?」



「楓くんの体から冷気伝わってくる」



「まじで?」



「でも私の手冷たいから、あっためてあげられない」



「十羽が隣にいるだけで、なんかあったかくなってくるからへーき」



俺は体を横に倒して、十羽の肩に頭を乗せた。



肩の動きから、十羽が驚いたのが伝わってくる。



やっぱりまだ緊張してんな。



「ちょっとだけ、こうさせて」



「う、ん」



「あー、おまえの隣が一番落ち着く」



目をつむり吐息とともに呟くと、十羽の弾んだ声が降ってきた。



「ほんとっ?
私も、小さい頃からずっと同じこと思ってた。
楓くんの隣が一番落ち着くんだよね。
相思相愛、だね」



「さすが俺の幼なじみ」



顔を上に向けると、十羽が俺に視線を落として笑った。



「私ねぇ、楓くん検定受けたら全問正解する自信あるよ」



どこから出た自信なのかわかんないけど、語尾に音符を飛ばして、満面の笑みを浮かべてる十羽。



はぁ……。



「心配になるんだけど」



可愛すぎて。



「ん?」