【完】君しか見えない







学校が終わり、その足でバス停に寄ると、

──いた。



「ただいま、彼女さん」



待合所のベンチに座っていた十羽が、俺の声に引っ張られるようにして顔を上げる。



俺の姿を認めると、その顔に笑みが広がった。



「おかえり。
えっと、彼氏、さん?」



「はは、ぎこちなさすぎ」



「照れるよ〜」



俺が長椅子に座る隣で、両手を頬に当ててはにかむ十羽。



十羽の顔を見るだけで、頬が自然と緩んでしまうんだから、俺は相当重症らしい。



だせぇな、俺、超舞い上がってる。



デレデレして我ながらキモいと思うけど、大切なものを前にして、なにも隠さず偽らず、本心をさらけ出せることに幸せを感じる。