私は楓くんの方に体を向け、笑ってみせた。



「楓くん。
楓くんがつらい時は、私が守ってあげるからね。
侮っちゃだめだよ? 私、意外と強いんだか──」



言葉の途中で、楓くんの顔が私の顔の横をかすめ、声が途切れた。



片方の手に持っていた空になったプラスチックのコップが、私の手から離れ、床にコロコロと転がる音が聞こえた。



私はもう一方の手で布巾を握りしめたまま、息を止めていた。



だって、楓くんが額を私の肩に乗せ、もたれかかってきたのだから。


まるで、ふっと糸が切れたかのように。