立ち上がり、テーブルの上の食器をふたりで片付け始めても、やっぱり楓くんはきゅっときつく唇を結んでいて。



テーブルを布巾で拭きながら、なにか面白い話題はないかと思考を張り巡らせていると。



「十羽」



不意に名前を呼ばれた。



「なに?」



楓くんは食器を重ねる手を止めて、でも長い睫毛は伏せたままつぶやいた。



「……おまえさ、俺が幼なじみで良かった?」



「え?」



突然の思いがけない質問に、私は思わずテーブルを拭く手を止めて、隣に立つ楓くんを見つめる。



「嫌だったろ」