乱された心も平静を取り戻した頃、キッチンに香ばしい匂いを漂わせ、ついにハヤシライスが完成した。
うん、香りと見た目はいい感じ。
心の中で合格点をつけた私は、それを綺麗にお皿によそって、冷蔵庫にあった食材で作ったサラダと共にリビングへと運ぶ。
「楓くん、夕飯できたよ」
勉強していた楓くんに声をかけると、私の声に気づいたのか、ノートにシャープペンを走らせていた手を止め、イヤホンを耳から外した。
「おー、うまそう」
「自信作だよ。食べて食べて!」
楓くんの前に夕飯をセッティングし、向かいの椅子に座って前のめり気味に催促する。
すると、スプーンを手に取った楓くんが、なにかに気づいたように私を見た。
「おまえの分は?」
「私は、食べてきたから大丈夫」
「ふーん? 随分はえーのな」


