【完】君しか見えない



正直言えば、申し訳ないけど、黒瀬くんのことなんてこれっぽっちも考えてなかった。



でも私が瞬時に思いついた、それらしくなる「く」から始まる言葉が「黒瀬くん」だった。



「おまえ、あーいうのがタイプだったんだ」



腕を組み、へー、と冷めた眼差しを向けられ、私は慌てて弁解する。



「ち、違う!
好きってわけじゃなくて、ほら、バスケの時の黒瀬くんがかっこよかったっていうか!
キャプテンとして頑張る黒瀬くん、かっこいいなっっいうか!
黒瀬くん、運動神経いいから、それでかっこいいなって思ったっていうか……!」



慌てているせいで、口から出る言葉が支離滅裂だ。



でも、誤解されたくなくて。


だって好きなタイプは他のだれでもない、楓くんなのだから。