【完】君しか見えない



それよりもだ。

私には大きな大きな気がかりがある。



「ハヤシライスの具材って、あったりする?
持ってきたかったんだけど、ちょっと調達できなくて」



ハヤシライスを作ると意気込んで来たのはいいものの、食材がなかったら話にならない。



すると、楓くんからホッとできる返事が返ってきた。



「たしかこの前、作ろうと思って買っといた気ぃする」



確認のため立ち上がった楓くんの後についてキッチンに向かい、冷蔵庫を覗く。



男の人ふたり暮らしとは思えないほど清潔に整理されている冷蔵庫には、しっかりとハヤシライスの具材が揃っていた。


さすが、ハヤシライスが大好物なだけある品揃え。



「おー、全部揃ってるねぇ。
じゃあキッチン借ります!
楓くんは、勉強でもしてて?」



「まずいハヤシライス作ったら、しょうちしねぇからな」



「善処します」



「よろしい」