……どうしよう。


最後まで楓くんの顔が見られなかった……。



スタスタと歩きだす、楓くんの足音が聞こえる。



だめだ。このままじゃ。


このままじゃ、いつまでも意識したままだ──。



「あ、あの……っ」



「ん?」



私の声を拾い、そしてそれに答えるように、楓くんが振り返る。



おどおどした瞳と、まっすぐでいて無機質な瞳とが、ついに交わった。



バクバクと心臓が跳ねまわり、だけど私は意を決して震える声をあげた。



「あの、さ、さっきの、キスってどうして……」



自分で口にしながら、カーッと熱が頬に昇ってきて、うつむく。



「起きてたのかよ」



冷静で抑揚のない声に、私は素直に謝る。



「ごめん。
あの時、目が覚めちゃって……」