時間を戻して何度でもあなたの恋人に。

ーーコンコン。

静かな病院にノック音が響く。

…まぁ、ノックしても返事は無いけど。

「失礼します」

…職員室に入るみたいだな

軽くそう思いながら入る。

一番奥のカーテンで仕切られているところをひょこっと覗く。

「……………」

ボーッとしているお母さんを見つける。

「お母さん来ちゃった」

「……………」

優しく微笑むお母さん。

「調子どう?」

私が買ったメモ帳を取り出して。

『声はやっぱり出ない』

「そ、そっか」

ちょっと…がっかりしたのを悟られないようにわざと明るめに振る舞う。

ま、そうだよね。自律神経が1日で戻るわけないじゃん。そんなんだったら、鬱の人が抗うつ剤飲んだら1日で戻ると一緒じゃん、と適当に自分をなだめる。

「昨日…叶ちゃんが倒れて…」

『叶翔君が?』

「うん」

『この前、冬華に迷惑掛けたから…イイコト教えてあげる』

唐突にそんなことを言われて少しびっくり。

全然、迷惑じゃないのに。むしろ話してほしい。だってたった2人の家族になっちゃったんだもん。辛いこと、嬉しいこと、悲しいこと、面白いこと、2人で共有していかなきゃ。


『寝る前に天使様、天使様、天使様。私の願いを聞いて下さいって唱えるとイイコトあるよ』

天使様…ねぇ。

超常現象とか一応信じてる。幽霊、心霊は信じてるけど、叶ちゃんが見える人なのもあるけど。UFOとかそういうのはだいたい合成だと思ってるから…な。

それからお母さんと雑談を交わした後に病院から帰った。