「じゃあ、俺がいってあげる♪てかさ〜、彼氏くん。お前も浮気してね?」

岸くんがいてよかったのか、悪かったのか。

果たして、彼は、中立的な立場になってくれているのだろうか。

よくわからない。

「あ?そんなことするわけねぇだろ」

「じゃあ、麗歌の告白受けてキスしてたじゃん♪」

キス…してたの…?

ーーズキン、ズキン、ズキン…

痛み出す、胸。

聞きたくない…けど、聞きたい。

私って…矛盾してる。

「あれは、キスじゃない。頰にされただけだよ。あんなん、不意打ちできたら避けれねぇだろ」

そう睨みをきかせて、苛立ったように吐き捨てる叶翔くん。

「じゃあ、桃花も、一緒じゃね?俺が不意打ちでしたから、避けられないじゃん」

「もういい。呆れたわ。桃花も、そいつがいいなら、そいつといろよ」

何も言わず、岸くんに任せてだんまりな私に腹でも立ったのか、立ち去る叶翔くん。

待って、そんな声すら出ないーーーー…。

ーーーーすれ違う音がする。

どこかから。

ーーーーすれ違う音が聞こえてくる。

近くから。

ーーーーすれ違う音が聞こえる、亀裂が入る音も聞こえる気がする。

ここから。

…少しのすれ違いから、亀裂なんて。

簡単に入ってしまうものなんだ。

そして、私は、動けなかった。

どうしたらいいのか

何をしたらいいのか

追えばいいのか

立てばいいのか

わからずに

私は、動けなかった。

わからなくて

私は、動けなかった。

涙が出そうで

私は動けなかった。