その瞬間、ぐるっと180度体が強制的に回る。

私の体は棚向きから、岸くん向きになる。

肩越しから、叶翔くんが見えた瞬間。

私の唇に柔らかい感触がした。

それが岸くんのものだと気づくには時間は大して要さなかった。

「桃ーー…」

叶翔くんがフリーズしてる。

あ…バレてしまった。

これ…浮気になるの…?

「おいっ!お前、人の彼女に何してんだよっ!」

怒鳴り、肩をグイッと掴む叶翔くん。

「え〜?だって、桃花がお前と会うのが嫌だって顔してたから。かな?でしょ?桃花」

おどけたように、ケラっと笑う。

「…っ…ごめん…な…さい…!」

のどがカラカラになり言葉がうまく出ない。

「なんで…だよ。理由…教えてよ…!」

悲しそうに、顔を歪ませる叶翔くん。確かに。

私も、会うのが嫌だと言われたらショックで言葉にもならないと思う。

「………………………」

だから何も言えない…。