時間を戻して何度でもあなたの恋人に。

「って感じですかね」

自嘲気味にあははと笑う。

「そっか…。辛かったんじゃない?自分を押し殺して来て」

ドキンとする。

確かに、私は〝本当の私〟を押し殺して〝良い子〟を演じていた気がする。

「別に…ふつうっ…です」

別に、別に。大丈夫なんだ。

これぐらい平気と言い聞かせても泣きそうになる。

なんでか、東さんの言葉は私の心を、涙腺を、弱くする。

「もう、大丈夫だよ。もう、俺の前では、頑張らなくて良いんだよ。もう、今日だけでも辛かったんじゃないの?お疲れ。もう、ゆっくり休みなよ。ここまで我慢してきたんじゃん。耐えてきたんじゃん。それって、えらいことじゃん。しっかり自分を肯定したあげてね?否定していたら悲しくなってしまうよ」

その言葉を聞くと、安心する。

涙腺が壊れる。

「別に。辛くなんて…っ……ない……っ。もっと…辛い人は…たくさんいます…っ……」

「どう言うこと?」

あえて、私の顔を見ないのはきっと優しさだ。

「病気とか、事故とか。生きたくても生きられない人の方が辛い。私のこの辛さなんて比にならない…っ…です」

だって最悪、生きていれば何とかなるから。

「そっか。でも…泣きたい時は泣いた方がいいんだよ。
辛い気持ちを溜め込んでも、辛いだけだよ。
無理に良い子にならなくても良い。
無責任なこと言うなって、思うかもだけど…1人の時はちゃんと〝素の自分〟でいた方がいいよ。
そうしないともっと自分が疲れてしまうよ」

やめて…やめて…やめて…。もう、堤防が壊れてしまって…泣きそう。

これ以上…泣きそうにさせないで。

人前では泣きたくないの。

だって…かっこ悪い。ダサいじゃない。

「ダサくないよ。」

「えっ!?」

まるで心の中を読み取られたみたいだった。

「あくまで俺の見解だけど…〝涙〟って、ストレスとか良くないものを流しているだけなんじゃないかな。だって泣いた後とかってスッキリしない?だから〝ストレス発散〟とおんなじなんじゃないかなーって思ってるよ?」

「そうなんです…か?」

「だから…泣きたい時は泣いていい。俺ならいつでも、相談に乗るから」

「ありがとうございます…」

その後、涙が溢れ出して来た。

わんわんと子供のように泣いて、泣いて、泣きまくった。

知らない人の前で泣いたけど…なぜか。

ものすごく懐かしい感じがした。