【結衣side】

思わず…冬華にいってしまった。

過去のことが少し、フラッシュバックしてしまった。

今でも、たまに出てくるあの日のこと。


今日、いきなりお父さんが出て行った。

なんでだろう。

中学生だった私には理解出来なかった。

…でも、ここから悪夢が始まった。

『おかーさん、おとーさんは?』

私は、母に問いかける。

すると母は睨んで来た。

とても鋭い目つきで。

母親が子供を見る目ではないのは、確かだ。

『おとーさんはね、出てったのよ。ほかに女作って。アタシたちを捨てたのよ。』

『なんでおんなのひと作ってでてったの?』

『あんたのせいよ』

一言で突きつけられた。

〝あんたのせい〟

『どうし…て。私のせい…?』

『あんたが出来が悪いから』

〝出来が悪い〟

〝出来が悪い…?〟


『ごめんなさい、結衣のせい』

おかーさんがふらっと近ずいてこう言い放つ。

『そうね。結衣のせいね。結衣がいると不幸になるわ。この疫病神…』

私がいると不幸になる。

…ワタシガイルトフコウニナル。

ソッカ、ダカラオトーサンデテイッタンダネ。

ワタシガイルトフコウニナルカラ。

…ワタシッテ、ホントウニヤクビョウガミダ。

『ごめ…なさ…』

『謝って済む問題じゃないわ』

そう行って私の首を両手で包み力を入れる。

苦しい、息ができない。

タスケテ…。

『おか…ん、ごめん…さ…い』

首を絞められていると言う状況の中で漠然と考えていた。

私…死ぬのかな。死ぬってどう言うことだろう。もう…死んでもいいかなぁ?別に…殺されたっていい。私のせいでみんなが不幸なら…。

〝死〟について考えたことがなかったから分からないなぁ…。

苦しくて、じわっと涙でて世界が揺らぐ。

苦しい…苦しい…苦しいよ…。

ちゃんと死ぬ準備をしたけど、そう思ってしまう。

しかし、突如肺に空気が入ってきた。

『ゲホッ、ゲホッ』

どうしてかわからない。どうして、手を緩めて私を殺さなかったのか。

『私、あんたのこと一生許さない』

でも、理由がわかった。お母さんは私に〝復讐〟をするのではないか。真綿でじわじわ…じわじわっと首を絞めるようにゆっくり、ゆっくりしていくのではないかと。

やはり…私のよみどうり、そこから虐待が始まった。


それから私が大人になり、虐待の事を聞くと、八つ当たりをしてしまった、という事だった…。