時間を戻して何度でもあなたの恋人に。

「冬華ぁ!」

この声はーーーー…叶ちゃん…!

振り返ると肩で息をしている叶ちゃんの姿があった。

「か…なちゃ…!」

ほっとしたあまりへにゃんと道路に座り込む。

「おい!オッさん。俺の彼女に何してんだよ?」

「別に何も…していないさ。ねぇ、お嬢さん。気分が悪そうだったからねぇ…」

そのおじさんは完璧目が泳いでいる。

嘘ということがバレバレだった。

「ちが…う。気分なんて悪くなかった…」

「ほらな」

そう言って私の前に立ち、おじさんから見えないようにする。

「クソガキィ…!」

ギリギリギリっと歯ぎしりをして叶ちゃんに殴りかかる。

「っ!」

その瞬間、おじさんの行動に気が付いた叶ちゃんは私の手を引っ張り、立たせて叶ちゃんの体に
寄せるような形になる。

そして、見事。おじさんの行動を避けてしまった。

「クッソ…!」

そう言い残しておじさんは走り去っていった。

「オッさん…待てよっ!」

私をそっと離して追いかけようとする叶ちゃんのブレザーの裾を掴んで止める。

「叶ちゃん…行かないで…」

いなくなってしまわないで。

すごく…怖い…。

「大丈夫かよ」

カタカタカタカタと震えてる体。

「全くいきなり走んなよ。俺も宣言したのは悪かった。それより走ったりするとおきる喘息持ってんだろ?」

「うん……」

それは運動誘発性喘息。それとは、運動。特にマラソンなどの急に激しい動きをすると「ヒューヒュー」や「ゼーゼー」といった呼吸困難になるもの。ただ、水泳や剣道、インターバルなどは症状が起きにくいもの。意外と辛いんだよね。長い間走れないし。

「かなちゃ…!?」

気がつくと叶ちゃんの腕の中。

叶ちゃんに触られるのは嫌じゃないけど、慣れない。

「もう。変なことすんなよ」

「うん…叶ちゃん…!」

「俺も…。じゃ、帰るぞ。ていうか。お前は可愛すぎるんだから気をつけろよ。いつか誘拐されんぞ。だから、俺から離れんじゃねぇぞ。もしまたこういうことあったら…」

あったら…?

「いなくなった回数×10回キスしてやる!」

ええっ!マジ…か…。

恥ずかしいような嬉しいような…。

そしてその日は、叶ちゃんが優しく話しかけてくれた。

だけど次の日の朝…本当にキスされた。

本当に恥ずかしいような嬉しいようなだった。

4割恥ずかしい。6割嬉しい気がした。