「有希ちゃーん、お邪魔しまーす」

自転車で15分。やっと有希ちゃんの家に着く。

「あ!冬華〜らっしゃい」

「らっしゃいって何?」

ラーメン屋さんみたい。

ふふふと笑うと有希ちゃんもつられて笑う。

それから、有希ちゃんの部屋にお邪魔しておしゃべり中。

うちのクーラーは壊れてて使えないけれど、有希ちゃんの家のクーラーは正常に稼働していてとっても涼しい。

だから着いた時に汗がだくだくだったけど、スゥッ、と引いてゆく。

「冬華〜!告白されたってホント?」

突然、祐くんのことを聞かれた。

「うん…」

告白されたのは1ヶ月前色々あって会えていなかった。

それで、私はいなかった今祐くんと呼んでいない。

〝祐くん〟と呼んでいるのはタイムリープ前のことで〝橋谷センパイ〟と呼ぶことになっているけど。

「で…返事は?」

「もちろん!断った…だって…叶ちゃんが好きだし…」

「やっぱりかぁ!」

冬華は一途だねという有希ちゃん。

…一途って言われるとなんか恥ずかしい

いきなり、

「で!告白、叶翔にいつするの?」

「告白ぅ!」

やっぱり言われちゃうかぁ。

自分でも悩んでたけど…

「いつしよう」

すると有希ちゃんがいつになく真剣な顔で

「冬華。自信持って、大丈夫だよ‼︎フラれたら、フラれた時だよ!当たって砕けろ!」

…有希ちゃん…。

励まされた。

「泣いてもいいよ!あたしンち来てきがすむまで泣いて!」

有希ちゃんらしい気合の入ったそんな声援を受けた私は泣きそうだった。

「こんな風に想ってくれたの」かと。

昔も似たような事があった。

私は合唱部で色々上手くいっていなくて悩んでいた時期があった。

その時、有希ちゃんが声を掛けてくれた。

『暗い顔してどうしたの』

『有希ちゃん…私合唱部に入ったの間違いだったかもしれない』

『なんで?』

『だって、私、音取り遅いし、パート練上手くないし、声も小さいし。何よりもへただし…
…有希ちゃん、いいなぁバスケ上手くて…有希ちゃんてなんか鉱石で表したらダイヤモンドぐらいだよ。私なんて石ころだよ』

その時私は、「頑張らなきゃ。でも…なんでこんなことができないの?みんなできているのに。私だけできていないんじゃ、落ちこぼれと一緒」と思い込みすぎていて…鬱っぽくなっていた…いや、鬱だったかもしれない。

その時は何か言葉が欲しかった。明るい言葉が。親には話せなかった。だってそしたら…「ほら〜。やっぱあんたには合唱部なんて無理だったのよ!」と言われてしまうし、心配はかけたくなかった。

当時有希ちゃんはバスケ部で1年でたった1人レギュラーだった。本当に上手で、上手くいってない私にとっては憧れるだけだった。

『ねぇ、冬華。私…石ころでも磨けば光ると思うよ。他の合唱部の人だって努力して磨いたから光ってるんだよ。磨けば光る!止まない雨はない、とか、明けない夜はない!一緒だよ。いいんだよ、冬華のペースで光っていけば。泣いてもいいよ。立ち止まればいい。辛くなりすぎたら、逃げてもいい…。ただ、前を向いて!何か、正しいものが見えるかもだよ!』

そういって励ましてくれた。

当時の私はその言葉に強く感動した。座右の銘が「磨けば光る」となったぐらい。

その後私は練習をたくさんしまくってだんだん良い方向へと向かっていった。練習だってパート練だって楽しく感じた。

有希ちゃんがいなければ今の私はいないと思う。


本当に感謝している。

ーーーーーーーーーーーありがとう、有希ちゃん

大好きです。