「傘、忘れてったことなかった?」
「あ・・・あります」
まだ、入学したての頃で、初めて神山さんを見た日だ。
見惚れすぎてて、自分が降りる駅に降り損ねそうになって、急いで降りたら、手元に傘がなかった。
外は、雨がバケツをひっくり返したぐらいに降っている、というのに・・・。
「あれが、印象的だった」
あんなのが印象に残って、覚えてるなんて、恥ずかしいし。
ん?待てよ・・・。ってことは、その時から、神山さんも私のことを知ってたってことじゃないか。
それって、すごいことじゃない?
私も、神山さんを初めて見た日に、神山さんも印象に残ってたって・・・。
「あと・・・」
「え?」
神山さんを見上げると、肩を揺らしながら笑っていた。
「な、何ですか?」
「この前、映画観に来なかった?」
「い・・・行きました」
ま、まさか・・・。
額から、冷や汗が出てくる。
「困ってたよね?ジュース」
いやー!!っと、叫びたい気分だった。
あんな失態まで、覚えてるとは・・・。
穴があったら、入りたい。
