吉田は気まずそうな顔をしたが、
やがて口を開いた。
「白石が来た、って思ったんだよね俺。匂いで分かった、近くにいる、って」
いつも以上に平凡な顔で言ってはいるものの、
『匂いで分かった』
その言葉に喜んでる自分がいた。
なんかいつも一緒にいるから、みたいな表現に聞こえて。
……これじゃあ私乙女みたいじゃんっ。
「へ、へえ……匂いで分かるほど一緒にいた覚えないけど」
喜んでいたのにも関わらず、
私から出るのはこんな言葉。
結局前と変わってない。
……っもう!私はツンデレなの!?
自分にイライラしていると、それを抑えてくれたのは他でもない吉田だった。
「いや、一緒にいたじゃん。席も隣で班も一緒で肝試しもバスも全部一緒じゃん」
「……ったしかに。最悪だね」
吉田が「一緒にいたじゃん」なんて言うと思わなくて。
びっくりしすぎて、照れすぎて、
思わず最悪だねだなんて言ったけど、でもっ。
嬉しい……素直に……。
ごめん、好き。……あんなに嫌いだったけど、好き。

