「ぜ、全部……?」


「うん。真依ちゃんの全部、もらいにいく」




ドキッと胸が鳴る。


でもこの高鳴りは、吉田のときとはどこかが違うの。




こんな王子様の腕の中にいても、今は、


吉田に会いたい。ちゃんと話したい。



ちゃんと言いたい……。




「そういうことだから、吉田とちゃんと話ししろよ!」




……きっと、私の心が読めたんだ。廉くんは。



腕を離して、私を解放させてくれた。



ほんとに廉くんって、王子様みたいだ。




「ごめんね廉くん!」




離された私は、屋上のドアへ向かう。


そしてもう1回振り向いて。




「あと……ありがとうっ」




精一杯の笑顔で感謝を伝えた。




「おう!」




心が暖かくなった。ものすごく。



廉くんに会えてよかったって心の底から思った瞬間だった。