廉くんの腕の中で泣いていると、
だんだん私も落ち着いてきた。
「ごめんね廉くん」
私はその腕から抜けようとしたが、
廉くんに阻止された。
「俺、優しくなんてないんだよ」
「えっ?」
抱きしめたまま、廉くんは言う。
「吉田のことを理由づけて今こうして抱きしめてるのも、優しくしてるのも、全部自分のためだし」
「自分のため?」
「そう。口実つけて、真依ちゃんに触れてたいだけ……、だから俺、ずるいんだよ」
どんどん語尾は小さくなっていったけど、
私にはきちんと聞き取れた。
真依ちゃんに触れてたいだけ、なんて。
王子様がこんなこと……!?
廉くんは少し顔を赤らめて言う。
「俺、それくらい真依ちゃんのこと本気だから。でも真依ちゃんの幸せそうな顔を見れるだけで俺はいいから……」
「廉くん…」
「でも、一つだけ願い聞いて」
私を抱きしめたまま、優しく耳元で嘆く。
優しいけど、でも意思がこもったような力強い、声で。
「吉田ともし上手くいかなかったら……俺が必ず真依ちゃん貰うから。全部」
耳元でこんなことを言われたせいで、
柄じゃないけど耳が真っ赤になってしまった。
こんな恋愛免疫なかったっけ、私。

