吉田を好きになるはずがない!!





当の吉田は、人の色恋沙汰をからかって笑っているけど。


私の気も知らないで!





気づけば私は勢いよく席を立ち上がっていた。



「え、白石どうし…………」



「……なんにも知らないくせに」




俯いてぼそっと喋ると聞き取れなかったらしく、吉田は首をかしげた。




「私の気持ちも知らないで勝手に決めつけないでよ!」




私の大声が、教室に響き渡る。


朝だからたいして人がいないのが救いだが、


いる人はみんなこちらに視線を向けた。





「だから吉田嫌いっ、大ッ嫌い!!この平凡男が!」



心にもないこと(平凡、っていうのは実際に思ってるけど)を言ってしまった私。


理性が保てなく、教室をバッと飛び出した。




「おい、白石!?」




後ろで聞こえた吉田の声なんて無視。



道行く人の視線など気にせず、

訳もなく流れてくる涙も気にも止めず、



ただただ。走った。