「でも!吉田はね、……」
「瑞希ちゃんといい感じなんだってば!」と続けようとした時、後ろに感じる平凡感。
ということは要するに……。
「うげ、吉田…………っ」
「うげ、ってなんだよ」
スクバを持ってだるそうに立つ吉田。
「い、いつからそこに……」
「今来たけど」
…………よかったあああ。
吉田を好きだとか聞こえてたら、私プライドズタズタにされて死ぬところだ。
「で、俺がなに?」
「…………は?」
莉緒が自分の席に戻ると、
吉田は唐突に聞いてきた。
「なんか俺の名前が聞こえたんだけど」
「……え?そう? 平凡な名字なんか私の話題に出てくるわけないでしょ」
いつも通り棘のある言葉を言っているけど、
内心ドキドキがやばい。
好きって自覚するとこんなに緊張するもんだっけ?
「てか白石、今日なんか顔赤くね?」
「…………!!!!!」
やばい。やばい。
赤くね?と言いながら私の顔を覗き込む吉田。
その顔は相変わらず平凡を極めてるけど…。
でも!近いし近いし近いし!!!!
さらに熱を帯びていそうな顔を必死に隠す。
「熱でもあんの?」
そう言って、私の動揺なんかお構い無しに吉田は私の額に手を置いた。
「……っちょ!!!!!! さ、触んないでよ!!!!!」
気が動転して私はパシッと吉田の手をどかす。
……やらかした。
こんな対応が取りたかったわけじゃないのに!

