そんなやりとりに、僕が気をとられていると、幹事の締めの声があがった。

 上司の長い挨拶が終わると僕は慌てて廊下に飛び出した。


 隣りの部屋の沖田建築も締めになったようで、出入口に人が固まっている。僕は慌てて彼女を探した。


 吹き抜けの階段の下に彼女を見つけた。

 ベージュのタイトスカートに白のニットの上に黒のコートを羽織っている。


 長い髪を下ろしているせいか、いつもより色っぽく見えた。

 酔い酔いになっているハゲおやじ達が、彼女を二次会に誘おうと彼女の手を引っ張りだした。

 僕はなんだか頭に来たがどうする事も出来ず、ただ彼女の姿を見ている事しか出来なかった。


 その時、総務課長の山下が階段を駆け下り、さりげなくハゲおやじ達の手を自分の肩に回し外へ連れ出した。

 そして彼女に手招きをした。

 彼女は周りに居た女子社員達と共に店の外へと出て行った。


 僕はその様子を、ただ茫然と見ていた。


「僕達も二次会に行きましょうか?」

 神野がぼうーっと突っ立って居た僕に、コートを差し出した。


「ああ」

 僕は我に返り、コートを羽織ると神野と店の外へ出た。


 二次会はカラオケボックスへ行ったが、彼女の事が気になっていた……
 
 まだ近くにいるののではないかと……



 皆と盛り上がって外へ出たのは十二時近かった。