「悠姉が、ここに来てからさっきまで、彼女をなんて呼んでいたか」
「そんなの、『璃那ちゃん』に決まって…………あ」
違う。
そういえばずっと『ルナ』と呼んでいた。蒼依も璃那も分け隔てなく、妹をちゃん付けで呼ぶひとなのに。
「じゃあ、二人とも知ってたんだな」
「ええ。ごめんね?」
「知っていたのは、そのことだけじゃないわ」
「なに?」
悠紀が申し訳なさそうに謝る一方で、蒼依は、俺の方を見ずに、自分の左隣に向けて言った。
「そうでしょ、ルナ姉さん」
「ええ、大丈夫だよ蒼依。全部打ち明ける。トキくんに全部打ち明けてもらうんだもの、それにはまず、わたしが全部打ち明けないわけにはいかない」
「…………」
そのまっすぐな瞳に見つめられ、俺は固唾(かたず)を飲んで、ルナの次の言葉を待った。
不意に、そよぐくらいの風が一陣、俺たちの間を縫(ぬ)うように吹き抜けた。明らかに、自然界の風ではない。きっと、この場にはいない誰かさんのチカラによるものだろう。
風が去ってすぐ、ルナが口を開いた。



