「ノーコメントだ」
蒼依に向かってうなずいてから俺に向かって問いを投げ掛けてきたアルテにはそう答えたが、たぶん気のせいではない。蒼依は璃那に憧(あこが)れている上、自分は声優としての璃那を誰よりも応援していると自負している。
普段のクールな仮面は、声優業界など璃那の関わる話をし出すと簡単に剥(は)がれ落ち、内に押さえ込んでいる熱が顔を出す。先ほど悠紀とのゲーム業界の話で姉妹ゲンカに発展しかけたのも例外ではない。
「アルテ、なんだって」
「非常によくわかったって言ってるよ。続けて大丈夫だ」
「そう」
蒼依にアルテの〝声〟が聴こえなくて良かった。思考に感情の熱を帯びた蒼依は、真実を確かめようともせずに俺の翻訳を鵜呑(うの)みにした。
「声優っていうのは俳優と同じく、歴(れっき)とした役者なのよ。だから、長年の夢を実現させたプロの声優である璃那姉さんが今夜これまで見せていたのが全部演技である可能性を、トキは捨て切れないってことなのよ」
《 なるほどな。――そうなのか? 》
「まあ、そういうことだ。つまり璃那は、俺がそう考えてるのを見越して、自分からは答えを明かさなかったわけだな」
しかし、仮に演技だったとして、わざわざそんなことをする理由も意図も、まったくわからない。
《 だが少なくとも見た目には、記憶を失くす前のリナなんだろ? 》
アルテはそれを、悠紀に訊いた。



